院長の体験ストーリー

「食べる喜び」は「生きる喜び」につながります。

誰もが「自分の口でしっかりと食事をしたい」と願っています。

当院は、患者様のその願いを叶えるため、精一杯のサポートをさせて頂きます。


以下にご紹介するのは、院長が実際に携わった患者様の物語です。

「口から食べる喜び」を取り戻して、以前より元気に

「もう口から何かを食べたり飲んだりするのは無理」と、思われていた患者様がいらっしゃいました。口がうまく開かない、たまたま開いたときにも、噛めない、飲み込めない、という状態が続いていたそうです。

 

そういった状態をあきらめてしまうと、お口の機能はますます低下し、「たまたま」でも開かなくなってしまいます。そこで、口腔ケアを行うとともに訓練を開始したところ、徐々にお水やジュースなどを少しずつ飲むことができるようになりました。

そしてついに、いちごを食べることができるようになったのです。液体はもちろんのこと、固形物などもう絶対に無理だと思われていたご家族はびっくりされていました。患者様ご本人が喜ばれたのは言うまでもありません。「口から食べる喜び」を取り戻したことで、患者様は以前より元気になられたそうです。

 

 

「食べたい」という意志を表し、言葉を発するように

いつもほとんど目を閉じて、表情も見せず寝たきりになっていたおじいちゃん。意志を伝えるということもしなくなっていました。

 

ところが、ていねいに口腔ケアを行って入れ歯をつくり直したことによって味覚がしっかり伝わるようになり、徐々においしいときには口角が上がり、さらに笑顔まで見せてくれるようになったのです。そして次第に、何か食べたいときには入れ歯をカチカチと鳴らすようになったり、ご家族の声かけに対し、ときどき言葉を発したりするようになりました。

こちらのおじいちゃんは、「食べる」という行為が身体のためだけではなく、脳や心を大きく刺激するということを、私たち医療者に身をもって確認させてくださったのです。私たちはこのことを、心から感謝しています。

 

 

患者様の尊厳を守る大切さ

お元気なときからご家族に、「食べられなくなったら、それ以上はもういいから」と話していたというおばあちゃん。摂食・嚥下障害が見られるようになったとき、ご家族はその言葉を思い出して、「なんとかしてあげたい」と強く思われ、ご相談いただきました。

私たちはご家族の想いをしっかり受け止め、「最後まで食べられる口」をつくるとともに、終末期の衰えの進行をどれだけ緩やかにしていくかを考え、口腔ケアと訓練に努めました。その結果、おばあちゃんは最期まで口から食事をとることができたのです。

介護をする側のご苦労はもちろんですが、される側の心のご負担もはかり知れないもの。ご家族は後に、「おばあちゃんの尊厳を最後まで守ることができました」と話してくださいました。このお話を伺い、私たちは今後も、患者様の尊厳をできるかぎり守っていく診療を行っていきたいという想いを、改めて確信したのです。